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ホットドッグ屋は、仲間と一緒にいるための言い訳。ダンサー・セイジュの原点と“これから”

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誰かとの出会いが、何かのはじまりとなっている。そんなことが世の中にはたくさんあるのかもしれない。

秋葉原にある『HOT DOG SHOP SPELL's』。ここは働くメンバーが全員、ストリートダンサーとしての顔を持つホットドッグ屋。

SPELL’sで働く6人は、皆リスペクトし合うダンサーでありながら、かけがいのない友達でもある。

SPELL’sを形作ったのは、「仲間とずっと一緒に遊んでいたい」という純粋な思い。

それは、偶然が折り重なって辿り着いた場所ではあるが、「仲間と一緒に居続けるためにはどうすればいいか」を真剣に考え続けたからこそ掴んだチャンスでもある。

これは、セイジュがシン、ジロウ、ズーヤ、コウヘイ、キョウヘイの5人と出会い、繋がり、SPELL’sがはじまるまでの物語。



どこから話しましょうか。そうですね……じゃあダンスをはじめたきっかけから。高校の新入生歓迎会なんですけど、そこでブレイクダンス同好会のパフォーマンスがあって……。


それが、ブレイクダンスとの出会いだった。ステージの上でかっこよく軽快に踊る先輩たちの姿に、少しだけ好奇心が刺激された。

結果として、セイジュはブレイクダンス同好会に入部する。しかし、ダンスに強く心を惹かれたわけではなかった。ただ、学校の決まりとして何か部活には入らなくてはいけなかったし、見学に行ってみたら練習時間の拘束も少なく楽そうだったから。ある程度自由にやれて、なおかつかっこいいのであれば、入ってみてもいいと思ったのだ。

ダンスを始めたものの、高校時代のセイジュが部活にのめりこむことはなかった。




校内で喧嘩して、僕だけしばらく隔離されて授業を受けてた時期があって。そのときの担当教師と本当に馬が合わなかったんですよね。

「お前は転校した方が良い」とか言ってくるんですよ? 頭にきて、絶対良い大学に入って見返してやると思って、その後の高校生活はずっと勉強してました。


勉強に費やした高校時代。当然、成績も上がり、推薦で大学合格を果たす。

大学ではダンスサークルを選んだ。経験者という余裕と自信もあった。しかし、結果は自分が井の中の蛙だと思い知ることになる。サークルには、トップシーンで活躍するようなダンサーが講師として参加していたのだ。自分の未熟さを自覚したセイジュは、ここからダンスにのめりこんでいく。


この頃にシンと出会ったんですよ。





当時の第一印象ですか? うーん、仲良くなる前は結構ドライなのかなって思ってたんですよ。僕が自分と関わった全員に「何かしたい」と思うのに対して、シンは「別にいいじゃん、放っておけば(笑)」みたいなタイプで。でも、仲良くなってみたら、シンはめちゃくちゃ面倒見が良い先輩でしたね。


入学した大学は、1、2年生と3、4年生でキャンパスが分かれるため、サークルの引退は2年生の終わり。3年生が在籍しないので、普段のレッスンはダンスのジャンルごとに2年生が仕切っていた。

シンは、当時ブレイクダンスのレッスンを仕切っていた2年生。

学部と学科が一緒だったこともあり、セイジュはシンとすぐに仲良くなった。過ごす時間が増えるにつれ会話は自然とため口になり、いつしか先輩後輩の関係ではなく仲間のような存在となる。


バカな兄貴みたいな感じっす。シンは、いるだけで面白いんですよ。


その頃の二人の関心事はもっぱらダンスで、川崎でよく一緒に練習をしていた。そしてその当時、川崎で練習していたメンバーはもう一人。


ジロウもいたんですよ。サークルのレッスンで出会って、ジロウも川崎に住んでたから一緒にやる感じになって。ただ、そのときは仲良しって感じではなかったです。





アイツ顔ちっちゃいのに、でかい帽子を被ってるからパカパカしてて(笑)、なんか少年みたいだなって思ったのを覚えてます。でも上から目線っぽくなっちゃうけど、最近は大人になったなと感じます。「東京」っぽくなったなあって。


3人で過ごしたこの時間も、ダンスしか頭になかったとハッキリ言える。一週間丸ごと、朝から晩までダンス漬けの生活。好奇心で始めただけのダンスをセイジュは本気で好きになっていた。


***


ジロウと仲良くなったのは2年生のときです。


シンがサークルを引退しLAに留学へ行ったことで、セイジュは次第にジロウと過ごす時間が増えた。サークルの総代表であるタイシュウを加えた3人で、よくダンスイベントや練習会の企画をしていた。


だいたい、タイシュウが「こういうのやろうよ」って言い出して、僕が実行する人で、細かいことをジロウがやる、みたいな役割がそのときはできてました。


イベントの企画は、サークルを引退してからも他サークルとの合同イベントや交流会という形で続いた。企画をする中で、フライヤーなどのデザインを依頼していたのが、サークルの後輩だったズーヤ。


そもそものズーヤとの出会いっすよね? それは2年生のときの新歓合宿かなあ。




高校からダンス経験があるズーヤは、1年生の中でも目立っていたが、セイジュのズーヤへの第一印象は「不思議系」だった。

ブレイクダンスのセイジュと、ヒップホップのズーヤ。ダンスのジャンルが異なる二人はそこまで接点が多かったわけではない。話しかけたのはズーヤからだった。


夜、みんなでダンスしたり遊んだりしてて、ちょっと気分転換に外に出たらズーヤが来たんです。そこで「これから1年生を、セイジュくんたちみたいにまとめていけるか不安だなあ」っていう相談をされた。

会ったばかりだったけど、よく考えてる子だなと思って、そこから徐々に仲良くなっていったんすよね。今でも、真面目な話はズーヤとします。


SPELL'sの6人のうち、同じサークルにいたのは4人。残りの二人とは、学外の活動を通して出会った。


まだ話してないのは、コウヘイとキョウヘイか。じゃあドロップスの話をしなきゃですね。


セイジュはサークルを引退する前、新しいダンスチームを学外で結成していた。名前は「ドロップス」。ブレイクダンスにおけるドロップという動きを由来とした名前は、渋谷のシーシャ屋で考えた。

当時のブレイクダンスシーンでは、若手が中堅層に萎縮してしまい前に出ることができずにいた。ドロップスは、そんな状況を壊していこうとしてつくられたチーム。

しかし、イベントでも先輩たちに物怖じせず噛みつくうちに、気づけばチームとしてダンスシーンから認められる存在となっていく。

そのドロップスのメンバーにいたのが、コウヘイだった。


コウヘイは……まあバカっぽかった(笑)。いや、第一印象ってマジで良い言葉が出てこないな。一緒にいると、場が明るくなるというか、ハッピーになるんですよね。コウヘイって。




ドロップスのメンバーは、一人ひとりセイジュが声をかけて集めた。コウヘイとの出会いは、セイジュのダンスの先生がおこなっていたワークショップ。


コウヘイって、大学からダンスを始めたからペーペーで。なのに始めて3ヶ月とかで一般のダンスバトルに出場してたんですよ。これ普通じゃないんです。

で、全然良くなかったのに「俺良かった!」とか言うような奴で。海外のイベントもバンバン行くし、俺も行ったことないようなイベントまで行ってて、すごい奴だなと思いました。それでドロップスに誘ったんです。


ドロップスの活躍は、後輩であるズーヤもよく見ていた。ジャンルは違えど、若手のダンスシーンで先輩たちと渡り合っていくドロップスの姿を見て、ズーヤも「マーベリック」というチームを組みはじめる。そのメンバーにいたのがキョウヘイ。


マーべリックってチームは、ドロップスと兄弟みたいに仲良かったんです。僕らが大阪にバトルに行ったら、マーベリックも大阪でショーがあるからって一緒にホテルに泊まったり。そうした交流の中でキョウヘイとも出会いました。





第一印象はデカくて無口なイメージでした。いや、今でもスペルズのメンバーの中では一番喋らないですね。「こういうことやりたい」って第一声を出すタイプではないし、思ってても言わないんじゃないかな。でも、みんなのことを支えてくれてるのはキョウヘイなんですよね。


***


スペルズは、メンバーの出会いとともにすぐ結成されたわけではない。時間は進み、セイジュが4年生になる頃。

就職活動をする同級生を尻目に、セイジュとシンは考えていた。従来の就職活動に取り組む自分たちの姿には違和感があるし、ダンスは続けたい。それならみんなで一緒に何かをできないかと。


学校の図書館の中にある会議室をテスト勉強のために借りてたんです。ホワイトボードを見てたら「なんかしたくねえ?」って話になって、そのうちにどっちかが「超イケてる学生ダンサーの団体を作りたい」と言った。


やるとなったら、一緒に動くメンバーを集める必要が出てくる。最初に名前が挙がったのは、ロゴなどのデザインができるズーヤ。ズーヤ自身、当時は「ONLY GOOD SHIT.」というイベントを、サークルや学外のダンサーを集めて開催していた。

仲間に加わったズーヤと話しているうちに、次にキョウヘイの名前が挙がる。当時、東京の六大学が集まる大きなダンス連盟に所属していたキョウヘイ。学生団体の所属経験があるメンバーがいると頼もしいと考え、声をかけた。同じころ、ずっと一緒に何かをやりたいと考えていた、ジロウも合流する。


途中、それぞれダンスの留学に行ったりもしてたんですけど、ゆっくりと計画は進んでて。

最後、みんなが帰ってきたタイミングで何でだかは忘れちゃったんですけど、「コウヘイは仲間に入れたいね」って話になったんですよね。急に。それでコウヘイの家にみんなで乗り込んだのが6人のはじまりかな。




チーム名は「NAME」。


名前をどうしようかなと考えているときに「名前をつける行為って、0を1にする行為だな」と思ったんです。そこがスタート地点じゃないですか。0にどんな数字をかけても0にしかならないから、まずは0を1にできないとはじまらない。

ダンスもショーもそうなんです。どんなに良い振りを作っても、どんな構成、フォーメーションを入れても、どんな衣装を着飾っても、最初に音楽を決めた瞬間に、そのショーは決まるんです。「スタート地点が大事」という意味を込めて『NAME』にしました。


しかし、その活動は、たった半年で終わってしまう。イベントを開催して、人も集まり始めていたが、自分たちの経験が足りていなかった。結果、理想と現実へのギャップや違和感が大きくなる前にやめることにした。当時、セイジュのパートナーの妊娠が判明したことも、その後押しとなった。


NAMEは代々木駅のタリーズで毎週ミーティングをしてて。定例会で「パパになります」って発表したら、みんなが凍り付いたのを覚えてます。生活がかかってますからね。みんな「マジでやらなきゃ!」ってなった。


ただ、NAMEの活動はやめなかった。NAMEとして、自分たちに何ができるか。それを考えていた頃に偶然、セイジュが働いていたシーシャ屋『いわしくらぶ』で、店主と常連客の会話が聞こえてきた。


そのときお店には二人しかいなかったから、会話がよく聞こえて。「賃料ゼロでお店を運営するスキームができたから、新しくお店を開きたい」という話をしてたんですよ。それを聞いて、すぐに「それって、僕もできますか」と声をかけに行ったんです。


その常連客は、賃料ゼロのスキームで無料のコワーキングスペースを運営していた。その仕組みは、ホテルのフロント業務を代行するかわりに1階スペースを賃料ゼロで提供してもらうというもの。


彼自身、僕たちダンサーの考え方を面白いと思ってくれていて。「できるよ!」って即答してくれた。すぐにみんなに話して「自分たちの場所が持てるってヤバいな」って盛り上がりましたね。


こうして、『HOT DOG SHOP SPELL's』は生まれた。




6人でいると、ジロウは一生ふざけてて、ズーヤが一人で話してて、それをキョウヘイがさばいてて、コウヘイは意外とみんなといるときは喋らなくなる。僕はいま話している感じと変わらないです。で、シンはみんなのことを俯瞰して眺めてて、いつも自分がボケる瞬間をずっと待ってる(笑)。僕は、ただこいつらと一緒にいるのが好きなんです。


セイジュにとって、仕事とは仲間と一緒にいるための言い訳づくりに過ぎない。資本主義の中で生きていく限り、お金を稼がなくてはいけない、それなら友達と遊びながらでもお金を稼ぐことができれば、社会から認められるはず。

SPELL’sを形作ったのは、「仲間とずっと一緒に遊んでいたい」という純粋な思い。

それは、偶然が折り重なって辿り着いた場所ではあるが、「仲間と一緒に居続けるためにはどうすればいいか」を真剣に考え続けたからこそ掴んだチャンスでもある。


将来、誰かがSPELL’sを辞めたっていいんです。それでも友達なことには変わりないじゃないですか。僕たちは墓までNAMEなんで。そこだけは、これから何があっても変わらないと思うんです。うん…変わらないっす。それじゃ、ダメですかね?(笑)。


POSTED

2021-03-28

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