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やりたいことは見つからなくてもいい。はしかよこが長旅で気づいた自分の本心

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やりたいことを見つけよう。自分らしく仕事しよう。夢を叶えるために成長しよう。
そう言われ続けてきた。それは恵まれた時代の幸せな教育だった。

でもいつの間にか、そうしなければ人生は楽しくないかのように思い詰め、いつまでも自分探しで迷子になったり、他人と比べて疲れ始めている人もいるかもしれない。

自分もそういう節あるかも…。そんなあなたには、ぜひこの記事を最後まで読んで欲しい。

はしかよこも、“さまよう旅人”のひとりだった。世界一周の“自分探しの旅”で気づいた答え、それは「自分は探さなくてもいい」ということ。その旅路を、彼女が影響を受けた言葉と共に追ってみよう。



“The only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking. Don’t settle. As with all matters of the heart, you’ll know when you find it. 
すばらしい仕事をする唯一の方法は、自分のやっていることを好きになることだ。まだそれを見つけていないのなら、探し続けなければいけない。安住してはいけない。心の問題のすべてがそうであるように、答えを見つけたときには、自然とわかるはずだ。”
(スティーブ・ジョブズ)




自分にしかできないことを探したい、とずっと思っていた。
自分がやりたいことを見つけたい、という思いが強くあった。

社会の歯車になってしまうような気がして、
one of themになってしまうような気がして、
就活をしなかった。

でも、自分の得意なことも人一倍頑張ってきたこともなかった。




「めちゃくちゃ典型的な若者だったと思う。"やりたいこと見つけなきゃシンドローム”にかかってた。自分がほんとうに精根尽き果てるまでやりたいことを見つけなきゃって。

昔から表現することは好きだったから、美大に編入したいとか映画の学校に行こうとか、そんな計画も立てたりしてみたけれど、お金がないとかの理由であっさり諦めてしまったんだよね。でもそのくらいの程度だったんだと思う」


結局やりたいことも見つからず、大学を卒業してしまったので、とりあえず派遣社員としてアパレルの販売員を始めた。お金を貯めるためのバイトだった。同級生が企業で働き始める中で、ひとり、社会から切り離されて、時が止まっていた。



ちゃんとした仕事に就くのを先延ばしにした分、本当にやりたいことを見つけなければ。いろんな自己啓発本を読み漁った。ある本に書かれていた、「自分をもっと知るための質問集」を埋めてみることにした。


2012年10月31日

ー得意なことは?


ー長所は?


ー譲れない人生の価値観は?



どれも空欄。どうしても書けなかった。


ーやりたいことは?

その質問だけには、細々とした小さな夢を箇条書きで書くことができた。



そのひとつには「パートナーと一緒に世界一周」という文字もあった。
大学生で初めてパリへ一人旅したときに決めていたことだった。地下鉄の階段を上がって、人の行き交うパリの街中に到着した瞬間、強烈な感動を覚えた。

“自分とは全然違うライフスタイルの人が生きてる!”

初めて、自分がとても満たされた状態だった。この感動を、誰か大好きな人と共有しながら、世界中を巡りたい。なんの論理も理屈もない、素直な動機だった。




“・・・この地上にはひとつの偉大な真実があるからだ。つまりお前が誰であろうと、何をしていようと、お前が何かを本当にやりたいと思うときは、その望みは宇宙の魂から生まれたからなのだ。それが地球におけるおまえの使命なのだよ・・・おまえが何かを望むときには、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ”
(パウロ・コエーリョ『アルケミスト 夢を旅した少年』より)



まずはいろいろやってみようと、かよこの人生探しの旅が始まる。知り合いに勧められたデンマークのフォルケホイスコーレ(高校卒業した人は誰でも行けるデンマークの国民学校)のサマープログラムに行ってみたり。

もっと英語力を身に着けたくなって、フィリピンへ語学留学に行ってみたり。

偶然Twitterで見つけた、ITベンチャーの「第二新卒向け・セブ島プログラミング研修」の選考に通って、半年間お金をもらいながら勉強をしたり。




無事エンジニアとしてスキルを身につけ帰ってきてすぐ、ITベンチャーの新規事業の立ち上げで沖縄へ。その後、渋谷に戻って働いていたら、偶然知り合った人からコミュニティマネージャーの仕事にヘッドハント。

副業で個人の仕事も引き受けはじめ、いろんなイベントにも顔を出すなど、忙しい毎日を送っていた。

でも、期待されている自分と本当の自分が少しずつ乖離して、思うように成果が出せなくなり、ある日、会社に行けなくなった。

「あの頃は、スタバのカップ持って街をせかせかと闊歩して、輝くキャリア女性になりたい、って思ってた。ヘッドハントも、すごいキャリアアップするしって喜んで受けた。けど、今考えたら、コミュニケーションの上手い女性エンジニアっていうポジションが空いていただけで、別に私じゃなくても良かったんだと思う」



どうしよう。

時が止まった部屋で、考えた。そもそもエンジニアになったのも、世界中どこにいてもリモートワークができるから、という理由だった。

今こそ、30歳までに行きたいと思っていた世界一周に行こう。

「ある意味、逃げ道。生涯かけてやりたいライフワークではないけれど、一旦マイルストーンをおいた感じ。でも、それがクリアできたら次が見えるかもって」




“君は仕事はしているかもしれない。でも、「生活」をしてないよね。ご飯を作る、服を洗う、住まいを綺麗に保つ。すべて君が君の責任においてやることだよ。一つ一つマインドフルであること。それが大事なことなんだ。”
(インドのおじさん)


ネパール、アイスランド、アルゼンチン…24カ国46都市を、パートナーと一緒に巡った。様々な場所を旅をすることで、自分の好きなことと嫌いなことの共通点が見えてきた。

寒いよりあったかいほうが好き、東京育ちだけど島っぽいカルチャーの方が合ってる、せかせかしているよりのんびりしている方が心地いい。

都心で育ち、都心で働いていたときには気づけなかった、自分の本当の心。




一番予想外だった気づきは、「仕事より家事が好きかも」ということだった。
小さいころ病気がちでずっと家にいた母や、早くに結婚して子供を生んだ学生時代の友達を見て、「家にいることの価値ってなんだろう?働いている方が価値がある」とずっと思ってきた。

「意義のある仕事、他人に認められる仕事をしなくちゃ。どんどんキャリアアップしていかなくちゃ。そう焦って生きてきた。でも、旅に出てみたらキャリアアップしたいなんて本当は思ってなかった自分がいた」

そのことに気づかせてくれたきっかけは、あるゲストハウスで出会ったインド人のおじさんから言われたこの一言。

“君は仕事はしているかもしれない。でも、「生活」をしてないよね”




言われてすぐは、あまり意味もわかっていなかった。

でも、「生活をする」ということを本気で実践してみたら、これまでいかにそれらをアウトソースして生きてきたかに気づくと同時に、それらがとても自分にとって満ちた時間になることに気づいた。


「自分のやりたいことを探すのではなくて、自分の本当の声を無視しないで拾えることが大事なんだと思う。それは、似ているようで少し違う。

 私の場合、料理をしたり家事をしたり、生活している時間が満たされているっていうことに気がついたんだよね。思えば、世界一周もどこか目的を作るよりも、その地域に暮らすように長期間滞在して生活してることが楽しかった」



2020年春に、世界一周の旅から帰国。

「生活」は楽しいけど、丁寧に生活するって、ひとりでは限界がある。そんな課題感から、みんなで生活を実践する場を作りたいと、食卓を中心としたサステイナブルな生活を実践する共同体「TSUMUGI」の立ち上げに参画した。

畑を耕してみたり、味噌を仕込んでみたり。
すべて自給自足は無理だけど、やってみてその大変さに気づくだけで、日々他の人がそれをしてくれているという循環を感じられる。それは、とても大きな違いだ。

現在は、そのコミュニティ第一期を迎え、本格的に共同体を育てていく準備を進めている。

「自然界と同じように、本当は人間も生きるってただそれだけでも尊いのに、なかなかそうは思えないようになってしまっている。偉大な仕事を成し遂げなきゃいけないなんてことはなくて、日々の生活に責任をもって暮らしていくほうがよっぽど偉いと、今は思う。今は、ごはんも毎日つくってるし、生活自体が楽しいの」



“生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい

花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱いだき 
それを他者から満たしてもらうのだ ”

(吉野弘『生命いのちは』より)


もうひとつ、現在ライフワークとして参画しているのがCapital Art Collective「MIKKE」。デザイナーやクリエイターがゆるやかに集まり、自分のできることを生かしてプロジェクトを作り出している組織だ。

MIKKEは、仕事の在り方が「自然の生態系」と近い。

ハチは自分のために蜜を集めて飛んでいるだけなのに、結果として花の受粉を手伝っている。
木も酸素を出そうとして光合成してるわけではないけれど、結果として動物の呼吸とバランスをとっている。



自然界にあるものは、自分が本質的に望んでいることをありのままにやっているだけで役に立っていて、循環のピースの1つになっている。

それと同じように、個人が本能的にやりたいと思ってることが、結果として誰かの役に立っている。かよこが就活のときからずっと違和感を抱いていた仕事の在り方に対して、それとは違ったやり方を模索しているのがMIKKEだ。



「お金を目的にプロジェクトが始まるのではなく、人と人との繋がりの中で偶発的にいろんなことが生まれて、結果的にお金を生み出していたらいいよねっていう態度。だから、いろんなことに時間はかかるけど、それってとても自然な経済だなあって。今はこの組織のあり方を、言語化して社会に発信したいなと思っています」


いつも自分に素直なかよこだからこそ、約10年間、文字通り世界をぐるぐる遠回りして、辿り着いた現在地。

どんなに自分の頭で考えていても、周りに影響されたり、社会の仕組みに押し込められたりすることもある。

そんなとき、ふと日常から距離をおいてみると、自分の本当の望みに気付けるかもしれない。



「一生やっていきたい仕事を見つけなきゃって、長い長い旅に出たら、結果として、見つけなくっても良いんだってことに気づいて帰ってきた。今は納得感を持って仕事も生活もできているなと思う。でも、人生のステージが変わったら、また旅が始まるのかもしれないね」



<information>
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POSTED

2021-03-21

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